ETCカードはほぼ、クレジットカード会員がカード会社に発行してもらう付加アイテムです。
信頼のクレジットカードブランドであるアメックスの会員も、もちろんETCカードを持てます。
アメックスの場合、完全無料ではなく発行手数料が掛かります。
手数料の掛かるアメックスでETCカードを作るメリット・デメリット、そしてデメリットの解消方法を見ていきます。
申し込み、解約の方法、発行日数なども併せて確認しましょう。
なお、法人カードの場合はルールが異なります。アメックスの個人カードについて見ていきます。
- 計6枚のETCカードを発行可能
- 年会費が無料
- 工夫するとポイント還元率が上がる
- ETCカード1枚につき935円の発行手数料が発生
- ポイント還元率が低い
※この記事に記載の費用はすべて税込価格です。
アメックスETCカードのスペック
アメックスで発行するETCカードの特性を、他のカードとの違いに着目して明らかにします。
なお、ここでいうアメックスとは「アメリカン・エキスプレス・カードの発行するプロパーカード」を指します。
セゾンアメックスなど提携アメックスカードについては、ETCカードのスペックはそれぞれの発行会社次第であり、統一されたものはありません。
それからアメックス公式サイトには、ETC利用において「ETC車載器」が必要とありますが、これは正確ではありません。
車載機がなくても、有人窓口でETCカードを提示すればカード決済となります。また、カーシェアやレンタカー等、自分のクルマでなくてもETCカードは役立ちます。
アメックスETCカードと他社との比較
アメックスグリーン(アメリカン・エキスプレス・カード)と、追加カードであるETCカードの特徴を見てみます。
ETCカードを作るのに有利な人気のカード、Orico Card THE POINTも、比較対象として取り上げます。
カード名称 | アメリカン・エキスプレス・カード | Orico Card THE POINT |
---|---|---|
カード年会費 | 13,200円 | 0円 |
ETC年会費 | 0円 | 0円 |
ETCカード新規発行手数料 | 1枚につき935円 | 0円 |
ETCポイント還元率 | 0.3% | 1.0%以上 |
ポイントアップのための年会費とその効果 | メンバーシップ・リワード・プラス(年間3,300円)に加入すると、0.5% | なし |
ETCカード発行可能枚数 | 本カードにつき5枚、家族カードにつき1枚 | 1枚 |
この結果を見ると、ETCカードが欲しいなら、アメックスの利用の人も、Orico Card THE POINTを新規に取得したほうがいいかもしれません。
ただし、アメックスETCカードのポイント還元率はもっと上げられます。これは後述します。
ETC利用のメリットが大きいカードは多数ある
Orico Card THE POINTは、次の要素を満たす1枚です。
- 本体もETCカードも維持費が永年無料
- ETCカードの利用で、通常通りの高いポイント還元率(1.0%以上)
この性質をすべて満たすクレジットカードは、他にもあります。
どこでも便利に使える汎用性の高いカードに限定すると、下記の表のようなラインナップです。
アメックスと同じく、高ステータスとされる基本年会費の高いカードからも、併せて比較してみましょう。
「ETCカードの年会費・発行手数料が無料で、ポイント還元率の高い」カードです。
ETCカード無料発行のカード | ポイント還元率 | 備考 |
---|---|---|
リクルートカード(JCB) | 1.2% | カード本体・ETC年会費無料 |
JCB CARD W | 1.0% | カード本体年会費無料 |
dカード | 1.0% | カード本体年会費無料/ETCは初年度無料、年1回利用で翌年度年会費無料 |
ジャックスカードプラチナ | 1.5% | ETC年会費無料 |
エポスプラチナカード | 0.5% | ETC年会費無料/ポイント還元率0.5%以上だが、ボーナスポイントが大きい |
Orico Card THE PLATINUM | 1.0% | ETC年会費無料 |
アメックスのETCカード利用のメリット・デメリット
先に、ETCカードの概要と、利用に便利なクレジットカードを見ました。
これを念頭に置いて、今度はアメックスで作るETCカードについて再確認です。
メリットとデメリットを確認しましょう。まずはメリットから。
- ETCカードの年会費が無料
- 5枚まで発行可能
- 家族カード会員も1枚発行できる
一般的にETCカードは1枚しか発行できないケースが多い傾向のなか、カード発行枚数の多さは最大のメリットといえます。
ETCカードについては550円ほどの年会費を取るカードが多いため、年会費で比較してもメリットがあります。長く使うほど年会費無料の効果は大きくなります。
- ETCカード1枚につき935円の発行手数料が発生
- ポイント還元率が低い
デメリットは、ETCカードの発行手数料が発生することです。
手数料が発生するからといって、ETCカードのサービスが拡大するなどの付加価値は一切ありません。
次に、ポイント還元率の低さについてはデメリットではありますが、これはやや種類の違うデメリットです。
ポイント還元率は、ETCカード利用時だけの問題ではなく、アメックスの決済全般の問題だからです。
通常のポイント還元率は0.3%と業界最低水準です。
アメックスのETCカードは、経費が高くリターンが薄い
アメックスはステータス重視で持つカードです。
基本のアメックスグリーンの年会費は、世間一般のゴールドカードと比べても高い13,200円です。
この出費を惜しまない人にとっては、ETCカード発行手数料、1枚につき935円はそれほど気にならないかもしれません。そうした人は、デメリットを気にしないでしょう。
さらに、アメックスは年会費以外にいろいろと費用が掛かるクレジットカードです。
ポイント還元率を上げるために加入するメンバーシップ・リワード・プラスでも年間3,300円の費用が発生します。
とはいえ、クレジットカードは経費とリターンのバランスを重視したいもの。
アメックスでETCカードを持つと、実際に経費とリターンがどうなるのか、項目を変えてシミュレーションをしていきます。
アメックスのETC、経費とリターンのシミュレーション
ETCカードを使う人をモデルに、複数のカードでシミュレーションをしてみます。
- 高速道路(有料道路)利用が月間15,000円
- 年間18万円、5年間で90万円
ETCカードを”5年間で90万円”利用する場合のリターン(ポイント)と、経費(発行手数料および年会費)を調べます。
カード本体年会費は、比較には適当でないので無視します。
所有するカードにより、結果はこうなります。
(5年間で90万円) | リターン | 経費 |
---|---|---|
アメックス | 2,700円 (90万円×0.3%) | 935円(発行手数料) |
Orico Card THE POINT | 9,000円 (90万円×1%) | 0円 |
リクルートカード(JCB) | 10,800円 (90万円×1.2%) | 0円 |
ジャックスカードプラチナ | 13,500円 (90万円×1.5%) | 0円 |
ヤフーカード | 9,000円 (90万円×1%) | 2,750円(年会費550円×5年間) |
新たに加えたヤフーカードは、ETCカード年会費が550円です。年会費無料のETCカードにはよくみられる料金設定で、これは楽天カードも同様です。
さてアメックスの場合、ETCカードを定期的に使う人でも、発行手数料を1年でペイできませんが、2年でペイできて、その後は得します。
それでも、ポイント還元率の高いカードには負けてしまいます。
ヤフーカードのような、ETC年会費を取るクレジットカードにも負けてしまうのです。
ETCカードの基礎
アメックスに限らず、ETCカードの性質一般について、概略をまとめてます。ここでおさらいしておきましょう。
- ETCカードを車載器にセットすれば、高速道路・有料道路の料金所を停車せずに通過できる
- ポイントの貯まるETCマイレージサービスを受けられる(車載器所有者)
- ETCカードはほぼ、クレジットカードの子カード
- ETCカード年会費と発行手数料は、カード発行会社により定められている(カード種別によって違うことはない/カードグレードにより異なることは多少ある)
- ETCカード発行可能枚数もカード発行会社により違う
- ETCカード利用でクレジットカードのポイントが貯まる
- レンタカー、カーシェア利用の際も自分のETCカードを使える
(上記の例外)
- まれに、ETCカードを発行しないクレジットカードもある
- ETCカード一体型クレジットカードもわずかに残っている
- ライフカードは、ETCカード利用でポイントが貯まらない
原則と例外を整理すると、誰にでもわかるおすすめETCカードの選び方がわかります。次のクレジットカードで持つことです。
- 本カード年会費無料
- ポイント還元率が高い
- ETCカード発行手数料無料、年会費無料
- 1枚のクレジットカードで発行可能なETCカード枚数が多い
最初の2項目については、ETCカードに限らず、クレジットカード自体のコストパフォーマンスがいいカードです。
その次に、ETCカード自体のコストパフォーマンスも重要です。
アメックスの場合、カード本体についてもETCカードについても、初期状態ではコストパフォーマンスは決して大きくありません。
アメックスのポイント還元率を上げる方法
アメックスでETCカードを持つメリットは、初期状態では発行枚数以外にはないことがわかります。
枚数を欲しい人には便利ですが、損得だけ考えるなら他の年会費無料カードを併用したほうがいいわけです。
とはいえアメックスを使いつつ、損得も意識したい人もいるでしょう。
カードの還元率自体を上げる方法を考えてみましょう。
これはETCカードに限った話ではありません。買い物全体の還元率です。
メンバーシップ・リワード・プラスに加入する
業界最低水準のアメックスのポイントプログラムですが、年間3,300円支払ってメンバーシップ・リワード・プラスに入ると多少還元率が上がります。
正確に言うと、これで参加費無料のボーナスポイントプログラムに加入できるようになります。
交換先にもよりますが、基本的にはポイント還元率が0.3%から0.5%に上がります。
さらに得になる使い方があります。「航空料金のカード利用代金」にポイントを充当すると、ポイント還元率1.0%となります。
メンバーシップ・リワード・プラス加入の効果はさらにあって、ポイント有効期限が無期限となります。
マイルに交換する
メンバーシップ・リワード・プラスに加えて、さらにポイント還元率を上げる方法があります。
ANAアメックスなどの航空提携アメックス以外のアメックスカードであっても、航空会社のマイルに交換する方法です。
ANAマイルだとマイル還元率1.0%ですが、年間移行上限があり、さらにメンバーシップ・リワード ANAコースで年間5,500円が必要です。
ANAマイル以外の会社だと年間移行上限はないものの、マイル還元率は0.8%です。
ともかく、還元率の低いアメックスもここまですると十分な数字が出ますので、ETCカードの使いがいもあるでしょう。
マイルを高い交換価値にして旅行するなら、先ほど比較したすべてのETCカードを上回る数字を出すことも不可能ではありません。
先のシミュレーションを修正してみます。ANA以外のマイルに交換(マイル還元率0.8%)かつ、1マイルを2.5円と控えめに計算します。
こうすると、ポイント還元率2.0%と同等になるので、なかなか優れた数字となります。
ポイント有効期限もないメリットを活かし、大きく貯めて大きく交換すれば、1マイルの価値はさらに高くなるでしょう。
経費については、5年分の年会費と発行手数料です。
(5年間で90万円) | リターン | 経費 |
---|---|---|
アメックス(ANA以外のマイル交換:1マイル2.5円相当) | 18,000円 (90万円×2.5×0.8%) | 17,435円 (メンバーシップ・リワードプラス3,300円×5+発行手数料935円) |
Orico Card THE POINT | 9,000円 (90万円×1.0%) | 0円 |
リクルートカード(JCB) | 10,800円 (90万円×1.2%) | 0円 |
ジャックスカードプラチナ | 13,500円 (90万円×1.5%) | 0円 |
ヤフーカード | 9,000円 (90万円×1.0%) | 2,750円 (550円×5) |
ETCで損をしなくなっています。経費については、ETC発行手数料だけでなくメンバーシップ・リワード・プラスの5年分なので、一般のお買い物のリターンを考える際もこのままスライドできます。
アメックスのETCカード、申込みから解約まで
アメックスのETCカードを、追加で申し込む方法から解約までを見てみましょう。
それほど特別なことではありません。
アメックスでETCカードを申し込む
アメックス会員がETCカードを追加で申し込む際の手続きを確認しましょう。
ETCカードのご案内からログインして申し込みをします。申込後、2週間程度でETCカードが到着します。
なお、ETCカードは無条件に発行されるものではなく、審査があります。
もっともすでにアメックスの会員なのに、ETCカードの審査に落ちるという例はあまり報告されていません。
アメックスのETCカードを解約する
アメックス会員が、ETCカードを解約するときの諸注意です。
ETCカードの解約は、Webや自動応答ではできません。カード裏面の電話番号に掛けて、オペレーターにつないでもらい申し出ましょう。
複数のETCカードを発行している場合、解約枚数も言い添えます。
ETCカードの解約をしても、本カードのほうに影響は出ません。ETCカードがただちに使えなくなるだけです。
年会費はないので、解約時期による有利不利の問題はありません。
アメックスでETCカードを使う意味とは
アメックスでのETCカード利用を振り返ります。
ポイント好きの人なら、別のクレジットカードでETCカードを発行した方がいいいいかもしれません。
とはいえ、せっかく手に入れたアメックスを活用したいと考えるのも当然です。
ETCカードだけでなく、アメックスの還元率を上げる工夫で対処しましょう。
- 枚数は多く発行できるが、他のカードと併用したほうがいい場合も
- 低い還元率はメンバーシップ・リワード・プラスに加入し、さらにマイルに移行することでカバーできる
アメックスは特に、日本のクレジットカードと個性が大きく異なるカードです。
ETCカードを上限の6枚まで複数発行したいと思うのなら、ずっとこのカードで行くと決意してからのほうがよさそうです。また、できればマイルを貯める使い方にしましょう。