クレジットカードには、世界で使える代表的な6大ブランドというものがあります。
VISAやMasterCardといった国際ブランドは、街やCMでよく目にする機会が多いですが、これらのクレジットカードブランドの特徴や違いはあまり知られていません。
クレジットカードを作る際は、何を基準にしてクレジットカードブランドを選べばよいのかわからないという人も多いでしょう。
この記事では、クレジットカードブランドとカード会社の違い、各カードブランドの特徴と違い、おすすめのカードブランドについ解説します。
- 6大ブランドはVisa、Mastercard、JCB、アメックス、ダイナース、銀聯
- VISA/Mastercardは利便性が高い
- JCB/アメックス/ダイナースはプロパーカードが発行されている
- 中国に行くなら銀聯は必須
クレジットカードの国際ブランドとは
クレジットカードの国際ブランドとは、クレジットカードを使って決済できるシステムのことです。
端的にいえば、どこでクレジットカードを使えるかという目印になるものです。
各ブランドのシステムが使える店舗のことを「加盟店」といいます。たとえば、VISAの決済システムを使える店舗は「Visa加盟店」です。
クレジットカードの券面に「VISA」のロゴが入っていればVisa加盟店で使えますし、「JCB」のロゴが入っていればJCB加盟店で使えます。
VISAなど、加盟店であれば世界中どこでも使うことができるカードブランドを「国際ブランド」といい、代表的なものを6大ブランドと呼びます。
6大クレジットカードブランドとは
6大カードブランドとは、以下6つを指します。
- VISA
- MasterCard
- JCB
- アメリカン・エキスプレス
- ダイナース・クラブ
- 銀聯(ぎんれん)
ザ・ニルソン・レポート(2015年)によると、各クレジットカードブランドの世界シェアは以下の通りです。
ブランド名 | 世界シェア(クレジット・デビットカード) |
---|---|
Visa | 約55.5% |
Mastercard | 約26.3% |
銀聯(ぎんれん) | 約12.8% |
アメックス | 約3.2% |
JCB | 約1.2% |
ダイナース | 約1.0% |
VisaとMastercardがシェアの約8割を占めており、カードブランドごとに大きな差があることがわかります。
カードブランドとカード会社の違い
混同しがちなのが、カードブランドとカード会社です。
カード会社とは、カードを発行している会社のことを指します。
申込者の信用情報を審査したり、クレジットカードが使われた店舗に入金したり、購入者と代金のやり取りをする会社です。
たとえばOrico Card THE POINTというクレジットカードの場合、以下のようになります。
- カード名:Orico Card THE POINT
- カード会社:株式会社オリエントコーポレーション
- カードブランド:VISAまたはMasterCard
したがって、「MasterCardを持っている」という表現は厳密にいえば誤りです。
「オリコが発行した、MasterCardブランドの(MasterCard加盟店で使える)Orico Card THE POINTを持っている」「私の持っているOrico Card THE POINTのカードブランドはMasterCardである」といった表現が適切です。
実際の会話の中でそこまで正確な表現をする必要があるか否かは別として、クレジットカードの仕組みを理解するうえできちんと整理しておくと良いでしょう。
プロパーカードとは
多くのカードはカード発行会社とカードブランドが別ですが、例外として、カードブランド会社が発行するクレジットカードもあります。
そのようなカードのことをプロパーカードといいます。
たとえばJCB Wというクレジットカードの場合、以下のようになります。
- カード名:JCB W
- カード会社:株式会社ジェーシービー
- カードブランド:JCB
プロパーカードは、提携するカード会社のロゴが券面に入らないなど、すっきりした高級感のあるデザインで人気です。
また、プロパーカードは年会費もステータス性も高い傾向にあります。
6大クレジットカードブランドの特徴・違いを比較
それぞれのクレジットカードブランドには、いったいどのような違いがあるのでしょうか。
以下の表に、主な特徴をまとめました。
カードブランド | 主な特徴 |
---|---|
Visa | 世界中に加盟店がある |
MasterCard | ヨーロッパを中心に加盟店が多い Apple Payオンライン、コストコで利用可能 |
JCB | 唯一の国産カードブランド 国内の加盟店数が多く、優待・サービスも充実 |
アメリカン・エキスプレス | プロパーカードのステータスが高い |
ダイナース・クラブ | 自社カードのみ 圧倒的ハイステータス |
銀聯(ぎんれん) | 中国に強い |
ここからは、6大クレジットカードブランドそれぞれの特徴、メリットやデメリットを詳しく解説します。
VISAの特徴
アメリカ生まれの国際ブランドVISAは、世界シェアNo.1のカードブランドです。
初めてクレジットカードを持つ人にもおすすめのブランドといえます。
VISAのメリット
- とにかく使える場所が多い
- プリペイド、デビット、タッチ決済あり
VISAはとにかく使える場所が多いです。
中国など一部地域を除いてVISAが使えないという場面は非常に少ないので、海外旅行の際も安心です。
また、VISAはクレジットカード以外にプリペイドカードやデビットカードでも展開されています。多様な使い方ができるのもメリットですね。
その他、Visaタッチ決済が使えるのもポイントです。
Visaタッチ決済対応の加盟店であれば、カードリーダーにカードをかざすだけで決済できます。
日本の電子マネーはFeliCaという仕組みが使われていますが、FeliCaは海外で利用できません。
その点、Visaタッチ決済はNFC-typeA/Bという世界共通の規格が使われているので海外でも利用可能です。
Visaタッチ決済は、マクドナルドやローソンなど国内でも使える店舗が増えてきています。
VISAのデメリット
- プロパーカードがない
- Apple Payオンライン、コストコで使えない
VISAは決済機能のみを提供しており、プロパーカードは発行されていません。
一般的にプロパーカードはステータス性が高いというイメージを持たれることが多いです。
プロパーカードの持つステータス性を重視する人にとっては、VISAに魅力は感じにくいかもしれません。
ただし、国内では三井住友カードが発行するクレジットカードをプロパーカードとみなす場合もあります。
ステータスの高いVISAカードを持ちたいなら、三井住友カードがおすすめです。
また、VISAはほとんどのシーンで使えるのですが、例外として以下のシーンで利用不可となっています。
- Apple Payのオンライン決済
- コストコ
これらを日常的に利用する人には、VISAは向いていないといえるでしょう。
MasterCardの特徴
MasterCardは、世界売上高シェア2位のカードブランドです。
国内・海外ともに使い勝手はVISAとほぼ変わりませんが、どちらかと言えばヨーロッパに強いと言われています。
「VISAは使えるけれどMasterCardは使えない」という状況は非常に少ないです。
MasterCardのメリット
- プリペイド、コンタクトレス決済あり
- Apple Payオンライン決済、コストコでの利用ができる
MasterCardブランドはVISAと同様プリペイドカードも展開されています。
必要に応じてクレジットカードと使い分けるなどそれぞれに合った使い方が可能です。
また、VISA同様NFCtypeA/B規格のタッチ決済「MasterCardコンタクトレス」が提供されています。
そしてiPhoneやApple Watch利用者にとってメリットとなるのが、Apple Payオンライン決済に対応していることです。
オンラインショッピングの決済にApple Payを使う人や、WalletアプリからSuicaのチャージをしたい人はMasterCardが必須となります。
また、コストコで使えるクレジットカードブランドはMasterCardのみです。
MasterCardのデメリット
- VISAに比べシェア・知名度が劣る
- プロパーカードがない
Apple Payオンライン決済やコストコを利用したいケースを除けば、初めてクレジットカードを作るときにわざわざMasterCardにする理由は見当たりません。
たとえばタッチ決済についても、国内ではMasterCardコンタクトレスよりもVisaタッチ決済に対応している店舗の方が多いなど、実用性ではVISAにいま一歩届かずといった印象です。
また、MasterCardではプロパーカードが発行されていないこともデメリットの1つといえるでしょう。
JCBの特徴
JCBは、唯一の日本企業カードブランドです。
VISAやMasterCardと比較すると海外での加盟店は少ないですが、ハワイ・韓国など日本人の多い地域では多くの加盟店を抱えています。
JCBのメリット
- プロパーカードを発行している
- 海外旅行での日本人サポートが充実
JCBはVISAやMasterCardと異なりプロパーカードを発行しています。
プロパーカードは券面に提携カード会社のロゴが入らないので、シンプルで高級感のあるデザインに仕上がっています。
また、海外旅行の際の日本人サポートが充実しているのもメリットです。
世界32ヶ所にあるJCB会員向けラウンジ「JCBプラザ」では、カードの紛失・盗難時のサポートはもちろん、ホテルやレストラン・観光などについて日本語で相談することができます。
初めての海外旅行で不安という人や、英語が苦手という人には心強い味方となってくれるはずです。
JCBのデメリット
- 海外での加盟店が少ない
- まれに国内でも使えない店舗がある
JCBはVISA/MasterCardに比べると海外加盟店が少ないです。
海外旅行の際は、JCBだけでは心許ないかもしれません。VisaかMasterCardブランドのカードも持っていったほうが確実でしょう。
ただし、JCBはアメリカのカードブランドDISCOVERと提携しており、DISCOVER加盟店では利用可能です。
また日本国内でも、スシローやPayPayへのチャージなどJCBが使えないケースがあります。
これは、VISA/MasterCardと比較してJCBの加盟店手数料が高いことが理由ではないかといわれています。
加盟店手数料とは、消費者がクレジットカード決済をしたときに店舗からカード会社に支払う手数料のことです。
加盟店手数料はカードブランドごとに異なり、VISA/MasterCardよりもJCB/アメックス/ダイナースのほうが0.5~1%ほど決済手数料が高く設定されています。
加盟店手数料が安いほうが店舗の利益率が高くなるため、特に小規模店舗などではJCBを導入しづらいという背景が考えられます。
アメックスの特徴
アメックスの正式名称は、アメリカン・エキスプレス(American Express)です。
国内では、セゾン等が発行している提携カードとアメックスが発行しているプロパーカードがあります。
アメックスのプロパーカードはステータス性が高いのが特徴です。その分、年会費や審査のハードルも高めです。
アメックスのメリット
- ハイステータス&充実のサービス
- 国内ではJCB加盟店で使える
アメックスのプロパーカードは、一般カードでも空港ラウンジを使える・最高5,000万円の旅行傷害保険が付帯するなど充実した優待サービスを受けられるのがメリットです。
また、アメックスはJCBと提携しているためJCB加盟店でも利用可能です。
アメックスのデメリット
- 電子マネー、スマホ決済で使いづらい
アメックスは電子マネーやスマホ決済サービスと連携して使うのには向いていません。
そもそもチャージの対象外である、チャージができてもポイントがつかない、AMEX QUICPayのサービスが終了したなど、電子マネーやスマホ決済には消極的な傾向がみられます。
ダイナースの特徴
ダイナースの正式名称はダイナースクラブ(Diners Club)です。1950年に世界初のクレジットカードとして発行されました。
提携カードでも自社で発行しており、富裕層の会員が多くステータスの高いクレジットカードとして知られています。
国内ではJCB、海外ではDISCOVERと提携しており双方の加盟店で利用できます。
ダイナースのメリット
- 圧倒的なハイステータス
- ダイニング特典が充実
ダイナースの提携先は、BMW・ジャガー・ANAなど一流企業ばかりです。
ハイステータスのイメージを崩さない企業だけがダイナースブランドのクレジットカードを発行できるのでしょう。
こういった部分も、ダイナースがハイステータスといわれる所以ですね。
また、ダイナースは「食事をする人」という意味があり、その名の通りレストランでの特別な優待が受けられます。
たとえば2名以上のコース料理を注文すると1名分が無料になる「エグゼクティブダイニング」や、高級レストラン「ひらまつ」の個室料2万円が無料になるなど、他にはない特典が充実しています。
ダイナースのデメリット
- 年会費が高い
- 審査ハードルが高い
ダイナースのクレジットカードは、一般カードでも年会費が22,000円です。年会費をかけたくないという人には向いてません。
ただし、ダイニング特典など年会費の元が取れるレベルの優待が用意されています。
また、明確な審査基準は公開されていないものの、カード申込時の審査ハードルが高いともいわれています。
銀聯の特徴
銀聯は、中国発の国際カードブランドです。英語ではUnionPay(ユニオンペイ)と表記します。
中国国内での圧倒的シェアはもちろん、中国以外でも利用可能です。
日本でも70万店で利用できます。
銀聯のメリット
- 中国では圧倒的なシェア
- DISCOVER加盟店で利用可能
銀聯は中国人のお財布代わりともいわれるほど、中国で普及しています。
中国では、VISAやMasterCardが使えなくても銀聯は使えるという店舗もあるほどです。特に中心部から離れるほどその傾向が強く見られます。
中国に長期滞在する、頻繁に行く、中国でビジネスをするという場合には必ず持っておきたいカードといえるでしょう。
また、DISCOVER加盟店で利用可能なので中国以外でも使えます。
銀聯のデメリット
- 中国に行かないなら持つ理由がない
- 日本国内で発行しづらい
中国に行かない場合、あえて銀聯ブランドを選択する理由は見られません。
実用性、優待サービス、ステータス性など、中国に行かない場合には他のカードに軍配があがりそうです。
また、日本国内ではまだ発行できるカード会社が非常に少ないです。
2020年1月現在、日本で発行できる銀聯のクレジットカードは以下の通りです。
- 三井住友銀聯カード
- MUFG銀聯カード
- ANA銀聯カード
- 九州銀聯カード
更に、このうち単独で発行できるのは三井住友銀聯カードのみです。
その他は、すでに各社クレジットを所有している人のみが申込みできる「サブカード」という位置づけになっています。
各ブランドはこんな人におすすめ!
各国際ブランドの特徴を解説してきました。
それぞれのクレジットカードブランドは、以下のような人におすすめです。
- VISA
クレジットカードを初めて作る人 - Mastercard
Apple Pay、コストコをよく使う人 - JCB
海外旅行時にサポートが必要な人 - アメックス
ステータス重視の人 - ダイナース
ステータス重視、高級レストランが好きな人 - 銀聯
中国によく行く人
クレジットカードを初めて作るなら、汎用性の高いVisaかMasterCardがおすすめです。
また、クレジットカードは1枚に絞る必要はありません。
2枚目以降は違うカードブランドを選べば、使える店舗や受けられる優待の幅が広がります。自分の好みや状況に合わせて選ぶとよいでしょう。
優待などをあまり使わない場合には、たとえば「日本企業を応援したいからJCB」「企業理念が好きだからMasterCard」など、どのカードブランドを応援したいかという観点で選ぶのもひとつの方法です。
特徴を理解し、自分に合ったカードブランドを選ぼう
最後に改めて、クレジットカードの6大ブランドの特徴やポイントをまとめます。
- クレジットカード6大ブランドとは、Visa・Mastercard・JCB・アメックス・ダイナース・銀聯
- VISA/Mastercardは利便性が高い
- JCB/アメックス/ダイナースはプロパーカードが発行されている
- 中国によく行くなら銀聯がおすすめ
ここまで見てきたように、各クレジットカードブランドごとにさまざまな特徴があります。
それぞれの特徴を理解して、自分に合ったクレジットカードブランドを選びましょう!