クレジットカード決済をしたときのお金の流れには、利用者とお店だけでなく、カード会社や国際ブランドも関係してきます。
クレジットカード決済を導入するとお店が手数料を払わなければならない、というのは聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
本記事では、クレジットカード決済の基本的な仕組みや手数料の行方を解説しています。
利用者にとってはあまり馴染みのない決済代行会社についても説明しました。クレジットカード決済の理解に役立ててください。
- クレジット決済には国際ブランド/カード会社/決済代行会社が関わる
- 手数料は発生するが、お店にもクレジット決済のメリットは大きい
- 加盟店手数料は最終的に国際ブランドまでたどり着く
- クレジット決済は多くの会社に利益をもたらす
クレジットカード決済とは
そもそもクレジットカード決済とは、どのような仕組みで成り立っているのでしょうか。
クレジットカード決済を簡潔に表現すると、「信用で買い物ができる」ことです。「ツケ払い」をイメージするとわかりやすいかもしれません。
クレジットカードを作るときには必ず審査が行われます。
いったい何を審査しているのかというと、「この人はきちんとお金を支払える人かどうか」という信用性を確かめているのです。
信用できる人だと判断できたら、ツケ払いのように後でまとめて払える権利(クレジットカード)が与えられます。
ツケ払いでも、どういう仕事をしていてどこに住んでいる人なのかお店の人がよく知っている、信頼関係を築いている常連さんでないとツケ払いなどできないでしょう。
クレジットカードを使うとその場でお金を払わずに済みます。お店側は売上がすぐに入らないと資金繰りに困るおそれがあります。
そこで、カード会社が代わりに立て替えておいてくれています。
つまり、私たち利用者が毎月カード会社に利用代金を支払っているのは、立て替えてくれた代金を返しているということなのです。
国際ブランドとカード会社の違い
クレジットカード決済の仕組みを理解するうえで最初におさえておきたいのが、カード会社と国際ブランドの違いです。
- 国際ブランド:決済システムのこと。Visa、Mastercardなど
- カード発行会社:クレジットカードを発行する会社。楽天カード、セゾンカードなど
国際ブランドとは
国際ブランドとは、クレジットカードを使って支払いできるシステムのことを指します。
日常的にクレジットカードを使っていると当たり前のように感じられるかもしれませんが、世界中のどこでも「誰が・いつ・いくら」使ったかを記録し、お店側には売上として、カード会社側には利用情報として、それぞれ処理するのはとてつもない技術です。
ネットワーク上では複雑な情報処理が行われていますが、私たち利用者の立場では「どこでクレジットカードを使えるかの目印」と理解しておけば問題ありません。
VISAのマークがあるお店ではVISAのマークがついたカードを、JCBのマークがあるお店ではJCBのマークがついたカードを使えるということです。
代表的な国際ブランドは世界6大ブランドと呼ばれています。
- VISA
- MasterCard
- JCB
- アメリカン・エキスプレス
- ダイナース・クラブ
- 銀聯(ぎんれん)
クレジットカードには、必ず国際ブランドのマークがついています。国際ブランドがついていないと、様々なお店でクレジット決済を行うことができないからです。
なお、2020年現在はほとんど見かけることはありませんが、国際ブランドがついていない「ハウスカード」と呼ばれるものもあります。
ハウスカードは、カード会社の関連企業等だけで「ツケ払い」が行える仕組みのものです。主に百貨店やガソリンスタンドが発行していました。
カード会社とは
カード発行会社は、クレジットカードの審査や発行をしています。
専門用語で「イシュア(issuer)」とも呼ばれます。issuerを直訳すると「発行者」なので、そのままの意味ですね。
毎月私たちが利用代金を支払う先であり、ポイントサービスや優待特典などを管理・運営しているのもカード会社です。
カードの申し込みや毎月の支払いで利用者と関わることが多いので、馴染み深く感じる人が多いのではないでしょうか。
- 楽天カード株式会社
- 三井住友カード株式会社
- 株式会社オリエントコーポレーション(オリコ)
- 株式会社クレディセゾン など
提携企業が絡む場合もあり
少しややこしいのですが、国際ブランド・カード会社の他に提携先企業が関わるクレジットカードも存在します。
たとえば「ビックカメラSuicaカード」の場合、以下のようになります。
- 国際ブランド:VISAまたはJCB
- カード会社:株式会社ビューカード
- 提携先:ビックカメラ
ビックカメラで所定の条件のもとカードを使うと、ビューカードで通常貯まる「JRE POINT」の他に「ビックポイント」が貯まります。
ポイントや優待の面で提携店舗が関わってくるケースが多いので、カードを選ぶときには提携先についても確認するとよいでしょう。
参考:アクワイアラについて
利用者と直接関わることはありませんが、専門用語で「アクワイアラ(acquirer)」と呼ばれる役割をもつ会社も存在します。
アクワイアラは、加盟店(クレジット決済ができるお店)の開拓や管理などを行っています。
しかし、日本ではイシュアがアクワイアラ業務も行っていることがほとんどなので、この記事ではまとめて「カード会社」と表記して解説します。
なお、国際ブランドを提供している会社のうちJCBとアメリカン・エキスプレスは、国際ブランド・イシュア・アクワイアラのすべての業務を行っています。
クレジットカード決済の基本的な流れ
クレジットカード決済に関わる会社について理解したところで、次はクレジットカード決済の基本的な流れを確認しましょう。
ここでは、私たち利用者とカード会社・買い物をするお店(加盟店)の三者間の関係性を見ていきます。
まず利用者が加盟店でカードを使って買い物をし、お店から商品を受け取ります。
すると、カード会社が購入代金を利用者の代わりに立て替えて加盟店に支払います。
このとき実際に支払われるのは、利用者の購入代金から3~4%程度の加盟店手数料を引いた金額です。
最後にカード会社からの請求が私たちの手元に届き、口座振替等で利用料金を支払うと、クレジット決済に関わる支払いがすべて完結します。
なお、加盟店手数料は、利用者がカードを使うたびに支払われます。
つまり、私たち利用者がカードを使う頻度や金額が多ければ多いほど、カード会社の利益が増える仕組みになっているのです。
カード会社の収入源は主に以下のようなものがあります。
- 加盟店手数料
- クレジットカード年会費
- リボ・分割払い手数料
カードの利用促進やリボ払い関連のキャンペーンが頻繁に行われているのは、カード会社の収益に直結するからなんですね。
お店がカード決済を導入するメリットとは
ここまで読んで、「お店は手数料を支払う分だけ損するのだから、カード決済を導入するメリットがないのでは?」と疑問をもった方もいるかもしれません。
確かに手数料が発生している分、純粋な利益は現金払いよりも少なくなります。
しかし、手数料を支払ってでもカード決済を導入するメリットがお店側にもあるのです。
- 来店機会の損失を防ぐ
- 顧客単価が上がる
- 外国人の来店が増える
来店機会の損失を防ぐ
私たち利用者にとって、クレジットカードは非常に便利なものですよね。
現金の手持ちがなくても買い物ができたり、カード会社のポイントがついたりと、利用者へのメリットが大きいものです。
たとえば同じ商品を同じ金額で売っているA店とB店があり、A店はクレジット決済可、B店は不可だった場合、ポイントがつくからという理由でA店で買い物をする人が多いのではないでしょうか。
つまり、お店からしてみれば、クレジット決済を導入しないことでお客さん(利用者)が他のお店に流れてしまうリスクがあるのです。
顧客単価が上がる
一般的に、現金払いよりもクレジット払いのほうが1回あたりの決済金額(顧客単価)が高くなるといわれています。
手持ちの範囲を超えて使えるので、財布のひもが緩くなりがちなのかもしれません。
私たち利用者からすると充分気をつけなければならない点ですが、お店からすると売上が高くなるのは当然嬉しいことですね。
外国人の来店が増える
観光地の飲食店などで特に大きいのが、外国人の来店です。
海外では日本よりもクレジットカード文化が定着しており、外国人観光客は基本的にクレジットカードが使えるお店に来店するといわれています。
どんなに良いサービス・商品を提供していたとしても、クレジットカードが使えないというだけで利用先の候補から外れてしまうことも。
他のお店にお客さんがとられるよりは、手数料を払ってでも自分のお店を使ってもらったほうが利益になりますね。
このような理由があるので、カード決済はお店側だけ損をするというわけではないのです。
影の立役者「決済代行会社」とは
私たち利用者が直接関わることはありませんが、「決済代行会社」と呼ばれる会社もクレジットカード決済には欠かせない存在です。
お店が新たにクレジットカード決済を導入する場合、各カード会社と契約を結んで「加盟店」になる必要があります。
しかしカード会社も国際ブランドもたくさんの種類があるため、一つ一つ契約すると手続きやシステム構築に膨大な手間と時間がかかってしまい大変です。
そこで活躍するのが決済代行会社です。お店とカード会社の間に入って、契約や入金などの面倒な手続きを一元管理してくれます。
お店にとっては、複数のカード会社と個別に契約を結ぶ必要がないので非常に便利ですね。
実際に、クレジットカード決済を導入するときはほとんどのケースで決済代行会社を介しています。
決済代行会社を通さずにカード会社と直接加盟店契約をしたほうが手数料は安く済むのですが、カード会社と直接契約できるのは大手企業に限定されているのが現状です。
決済代行会社が入る場合のお金の流れ
決済代行会社を介する場合、お金の流れは次のようになります。※②~④の順番については各社違いあり
決済代行会社が間に入った場合でも、私たち利用者が支払う金額や支払先・支払方法などが変わることはありません。
加盟店が手数料を支払う先が、カード会社から決済代行会社へと変わります。
また、カード会社との間を取り持って手続きを行ってくれる分、直接カード会社に支払うよりも手数料は高くなります。
お店にとっては手数料が高いのは痛手ですが、導入にかかる手間を考えると必要経費といえるかもしれません。
その後、あらかじめ2社間で取り決めた手数料を差し引いて、カード会社から決済代行会社に支払いが行われます。
国際ブランドの役割と収入源
すでにお気づきの方もいるかもしれませんが、ここまで解説したお金の流れに「国際ブランド」は出てきていません。
では、国際ブランドを提供している会社(例:JCBを提供している株式会社ジェーシービー)は、いったいどのように利益をあげているのでしょうか。
記事の序盤でもお伝えしたとおり、国際ブランドとはクレジットカード決済ができるシステムそのもののことです。
仮にカード会社が決済システムを開発しようとすると、膨大なコストと時間がかかってしまいます。
そのため、自社で開発するのではなく、決済はすでにある会社のものを使わせてもらおうということでクレジットカードには国際ブランドがついているのです。
国際ブランドは、カード会社に対してライセンスを発行して決済システムを貸し出しています。
そのライセンス料(ブランドライセンスフィー)が、国際ブランドの主な収入源のひとつです。
その他、利用者が決済するたびに発生するネットワーク手数料なども受け取っています。
なお、加盟店手数料が3.24%であるのに対して、カード会社から国際ブランドに支払われる手数料の合計は0.1%です。
ネットワーク手数料等は決済ごとに発生するので、カード会社が増えて利用者が買い物をすればするほど国際ブランドの収益も増えるという仕組みになっています。
クレジットカード決済の仕組みを理解しよう!
加盟店が支払う手数料は、少しずつ割合を減らしながら決済代行会社→カード会社→国際ブランドの順番で流れていきます。
クレジットカードを1回使うだけで、たくさんの会社に手数料という形で利益が発生しているのは意外だったのではないでしょうか。
仕組みや特徴を正しく理解して、クレジットカードをお得に使いこなしましょう!
- クレジット決済には国際ブランド/カード会社/決済代行会社が関わる
- 手数料は発生するが、お店にもクレジット決済のメリットは大きい
- 加盟店手数料は最終的に国際ブランドまでたどり着く
- クレジット決済は多くの会社に利益をもたらす